普段、私たちが料理をする際に当たり前のように捨ててしまう「卵の殻」。ところが近年、「卵の殻にはカルシウムが豊富」「実は栄養価が高い」といった話を耳にすることが多くなっています。
本当に卵の殻には栄養があるのでしょうか。もしそうなら、家庭で食べても問題はないのでしょうか。検索すると安全と危険の情報が入り混じっていて、「本当のところはどっち?」と疑問に思っている人も多いはずです。
また、卵の殻は研究対象としても扱われてきました。ただし、「誰でも安心して食べられる食品」としての研究ではなく、「成分としての再資源化」の研究です。
本記事では、卵の殻の栄養や卵殻パウダーの作り方、そして、食品衛生の考え方を踏まえながら、なぜ注意が必要なのかをわかりやすく解説していきます。また、研究による卵の殻の利用方法やよくある質問にも答えていきます。
極端な健康情報に惑わされないで、「知識として正しく理解する」ための雑学として、卵の殻の真実をひも解いていきましょう。
卵の殻に栄養は本当にある?

卵の殻に栄養があるのか、という疑問は、「殻=食べ物ではない」という日常感覚と、「栄養が豊富らしい」という情報との間で生まれます。どちらも間違いではないからこそ、話が少しややこしくなります。
結論から言えば、卵の殻には栄養成分と呼ばれるものが含まれています。ただし、一般的な食品と同じ意味での「栄養がある」とは少し違います。
卵の殻の主成分は炭酸カルシウム
卵の殻の主成分は「炭酸カルシウム(CaCO3)」です。石灰石や真珠、サンゴなどと同じ成分で自然界における非常に安定した無機化合物のひとつになります。
炭酸カルシウムは人間の骨や歯の形成・維持に不可欠なカルシウムの供給源で、十分な量を適切に摂取すれば、効率的にカルシウムを補給することができます。
卵の殻の炭酸カルシウムは、乾燥重量の約94〜95%を占めていて、この割合だけを見ると「カルシウムが豊富」という表現は事実と言えます。
カルシウムを卵の殻と代表的な食品とで比較してみました。
| 食品名 | カルシウム含有量 (100g中) | 特徴 |
|---|---|---|
| 卵の殻(パウダー) | 約38,000mg | 圧倒的な含有量。微量で1日分をカバーできる。 |
| 普通牛乳 | 約110mg | 吸収率は高いが、量を飲む必要がある。 |
| しらす干し(小魚) | 約520mg | タンパク質も摂れるが、塩分に注意。 |
| 小松菜(生) | 約170mg | 野菜の中では優秀だが、吸収率は低め。 |
| 干しエビ | 約7,100mg | 含有量は高いが、一度に大量には食べにくい。 |
| 卵の殻(粉末) | 約38,000mg/100g | 圧倒的な含有量。微量で1日分をカバーできる。 |
|---|---|---|
| 普通牛乳 | 約110mg/100g | 吸収率は高いが、量を飲む必要がある。 |
| しらす干し(小魚) | 約520mg/100g | タンパク質も摂れるが、塩分に注意。 |
| 小松菜(生) | 約170mg/100g | 野菜の中では優秀だが、吸収率は低め。 |
| 干しエビ | 約7,100mg/100g | 含有量は高いが、一度に大量には食べにくい。 |
参考資料:食品成分データーベース
卵の殻の炭酸カルシウムは、非常に安定した結晶・方解石(カルサイト)でできていて、熱に強いのが特徴です。そのため、加熱調理(煮沸やオーブン焼き)をしても成分が壊れることがなく、安心して加工できます。
また、卵の殻には、目に見えないほどの小さな穴が約7,000〜17,000個、開いています。これは雛が呼吸するための通気口です。殻の「多孔質構造」は、掃除の際の吸着剤として機能したり、土壌に混ぜたときに微生物の住処になったりします。
微量ミネラルの相乗効果
卵の殻には、ごく微量ながらマグネシウムやリン、カリウムなどのミネラル成分も含まれていることが報告されています。
これらのミネラルは、体内で単独で働くのではなく、カルシウムと互いに影響し合いながら機能しています。たとえば、マグネシウムはカルシウムの代謝に関与し、リンは骨の構成要素の一部として重要な役割を担います。こうした関係性から、「カルシウムだけを精製したサプリメントより効果があるのでは」と注目されています。
しかし、あくまでミネラルは“微量”です。相乗効果を実感できるほどの影響を持つかどうかは、わかりません。
それでも、卵の殻はカルシウムだけでなく複数のミネラルを含む素材である事実は興味深いものです。それをどのように評価するかは、研究や摂取方法を踏まえて冷静に考える必要があります。
卵殻膜の驚異的なパワー
卵の殻のすぐ内側にある薄い膜を「卵殻膜(らんかくまく)」と呼びます。実は、殻そのものだけでなく、この膜にも素晴らしい栄養が含まれています。
卵殻膜は主にタンパク質でできていて、その中に「コラーゲン」や「ヒアルロン酸」、さらに美白成分として知られる「シスチン」が豊富に含まれています。
近年、美容業界や関節ケアの分野でこの卵殻膜が注目されていて、サプリメントや化粧品の原料としても広く利用されています。卵殻膜も卵の殻と一緒に粉末にして摂取すると、カルシウム以外の栄養も補給でき、美容・健康効果が期待できます。
卵殻カルシウムは体に吸収されやすい?

卵殻カルシウムについて調べていくと、「吸収率が高い」という評価を目にすることがあります。カルシウムは摂取しても体に吸収されにくい栄養素として知られているだけに、この点が気になる人も多いでしょう。
研究で報告されている吸収性
食品科学・栄養学分野では、卵殻を洗浄・加熱・粉砕して作られる「卵殻カルシウム粉末」を用いた研究が進められています。
卵殻カルシウムのいちばんの特徴は、他のカルシウム源と比べて吸収率が高いことです。
- たくさんの目に見えない細かな穴がある多孔質構造で胃酸に触れる面積が大きく溶けやすい
- カルシウムの吸収を妨げるリンの含有量が少ない
また、体内で利用される割合もキユーピーの研究により一般的な炭酸カルシウムと同等か、それ以上であることがわかっています。
卵の殻のカルシウムが注目されている理由

現代社会において、なぜこれほどまでに卵の殻の再利用が叫ばれているのでしょうか。そこには「日本人の深刻な栄養課題」と「持続可能な社会(SDGs)」への意識の高まりがあります。
日本人の慢性的なカルシウム不足
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、日本人のほとんどの世代において、カルシウムの摂取量は推奨量(男性750~800mg、女性650mg)を下回っています。カルシウムは吸収率が低い栄養素であり、乳製品、小魚、海藻、豆腐などから意識的に摂取しなければ、すぐに不足してしまいます。
カルシウムが不足すると、体は骨に蓄えられたカルシウムを溶かし血液中に出して補おうとします。これが長期間続くと、骨密度が低下し、「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」のリスクが高まります。特に閉経後の女性や高齢者にとって、いかに効率よくカルシウムを補給するかは最大の課題です。
そこで、安価で(あるいは実質無料で)手に入り、かつ含有量が極めて高い卵の殻が、究極のカルシウム不足対策として注目されているのです。
エコと節約の両立
世界では年間で数百万トンもの卵の殻が廃棄物として処理されています。廃棄される予定の卵の殻を有効活用することができれば、ゴミの減量になるはずです。
また、家庭で卵の殻を栄養源に変えられれば、高価なサプリメントを購入する費用も節約でき、家計にも環境にも優しい活用方法ということになります。
卵の殻は家庭で食べられる?

卵殻カルシウムの研究を知ると、「それなら家庭でも食べられるのでは?」と考える人も多いと思います。実際、文献や研究の中には、卵の殻をカルシウム源として扱った例もあります。
ただし、ここで大切なのは研究上の“利用可能性”と、家庭で日常的に行う行為は同じではない、という点です。卵の殻の栄養が話題になるとき、この二つは混同されやすく、それが誤解の原因になっています。
研究資料では「処理すれば利用可能」
国内外の研究資料では、卵の殻を洗浄・加熱・乾燥・粉砕といった工程を経たうえで、カルシウム素材として評価されています。研究に使われた卵の殻は、衛生管理されたものを使い、処理条件も細かく設定されています。
つまり、「処理すれば利用できる」とされているのは、前提条件として明確に管理された環境下での話です。研究や食品素材開発では意味のある評価も、一般家庭で同じ環境や条件を再現することは容易ではありません。日本の食品衛生の考え方では、安全性・再現性・継続性がそろって初めて、広く勧められる対象になります。
この点を理解せずに、「煮沸すれば大丈夫」「粉にすれば安全」と単純化してしまうと、研究資料の意図から外れてしまいます。
卵の殻を摂取する際の「3つのリスク」
日本では、食品の安全性に関して比較的厳格な考え方が採られています。卵についても、生で食べられるほど衛生管理が行き届いていますが、殻の表面には細菌が付着する可能性があるという前提は変わっていません。
そのため、公的機関や専門家の立場から、卵の殻を家庭で食用にすることは一般的に勧められていません。これは「危険だから一切ダメ」という意味ではなく、日常的な食品として扱うには不確定要素が多いという、日本の食品衛生上の判断に基づくものです。
また、卵の殻をそのまま口にすることは、健康を害する大きなリスクを伴います。
卵の殻の3つのリスクと注意点を詳しく解説します。
サルモネラ菌による食中毒
最も警戒すべきは「サルモネラ属菌」です。卵の殻の表面には、鶏の腸内に生息するサルモネラ菌が付着している可能性があります。食品安全委員会の食品健康影響評価技術研究では、サルモネラ菌の汚染確率を0.0029%程度としていますが、これは中身の汚染確率です。殻はもっと汚染されているはずです。
卵の殻は市販される前に洗浄・殺菌されていますが、家庭での保存状態や取り扱い次第では菌が付着し、増殖する恐れがあります。また、直売所などの卵は、洗浄や殺菌にばらつきがあり、食品としての安全基準が一定に保たれているとは言いにくいのが実情です。
卵の殻を摂取する際の絶対条件は、「徹底した加熱殺菌」です。不十分だと、激しい腹痛、下痢、嘔吐、発熱を引き起こす食中毒の原因となります。
鋭利な破片による消化管へのダメージ
卵の殻は非常に硬く、砕き方が不十分だと鋭い破片が残ります。破片は口や喉、食道、胃や腸の粘膜を傷つける恐れがあります。
「よく噛めば大丈夫」という大きさでは不十分で、粉末ミルや電動粉砕機などを使って安心して食べられる「微細なパウダー状」にする必要があります。
過剰摂取による健康被害
「体に良いから」と大量に摂取するのも危険です。カルシウムの過剰摂取は、便秘や結石、高カルシウム血症による意識障害、あるいは昏睡に至る緊急疾患を引き起こす原因にもなります。
また、他のミネラル(鉄や亜鉛など)の吸収を阻害することもあります。
1日の上限は成人で2,500mg(食事とサプリの合計)です。推奨摂取量の成人男性750~800mg、成人女性650mgを守り、少しずつ摂取することが健康への第一歩です。
自家製「卵殻パウダー」の正しい作り方

卵の殻を安全に、そして美味しく摂取するためには、適切な加工プロセスが必要です。ここでは、プロも推奨する安全な卵殻パウダーの作り方を詳しく解説します。
手順1:洗浄と内膜の確認
卵を料理に使った後、殻を流水でよく洗います。この際、内側の膜(卵殻膜)は残しておいて構いません。むしろ、栄養があるので、一緒にパウダーにするのがおすすめです。
ただし、白身の残りは腐敗の原因になります。ヌメリがなくなるまでしっかり洗い流しましょう。
家庭で再利用するときは、洗浄が必要です。しかし、洗浄のときに、強力な洗剤や漂白剤を使ってしまうと殻の微細な穴(気孔)に浸透してしまう可能性があります。
卵の殻の洗浄は流水で行い、加熱で殺菌するのが基本です。
手順2:煮沸消毒(重要!)
鍋にたっぷりの湯を沸かし、洗った殻を入れます。沸騰した状態で少なくとも10分間以上煮沸してください。サルモネラ菌をはじめとする細菌を完全に死滅させます。
手順3:乾燥
煮沸が終わったら、ザルに上げて水気を切ります。その後、さらに完全に水分を飛ばす必要があります。
- 天日干し: 風通しの良い場所で1日乾燥させる。
- オーブン: 100℃〜120℃のオーブンで10〜15分ほど焼く。
- 電子レンジ: 耐熱皿に並べて数分加熱する(焦げないように注意)。
オーブンで軽く焼くと、殻がパリパリになり、粉砕しやすくなるだけでなく、香ばしい風味も加わります。ただし、150℃以上の高温で焼きすぎると焦げ臭くなるため、100℃〜120℃の低温でじっくり乾燥させるのがコツです。
オーブンで加熱した際、少し焦げたような、あるいは生臭いような匂いがすることがあります。
原因は洗浄不足です。殻の内側に白身のタンパク質が残っていると、加熱時に独特の臭気を放ちます。煮沸する前に、内側のヌメリが完全になくなるまで指で優しくこすり洗いしてください。
手順4:粉砕(パウダー化)
最も重要な工程です。乾燥した殻を細かく砕きます。
粉末ミルや電動粉砕機を使うと短時間で小麦粉のような微細なパウダーになります。手で触ってみて、ザラつきがほとんど感じられない「煙のような粉」になるまで徹底的に粉砕してください。
すり鉢では、時間を掛けても細かく粉砕するのに限界があります。粉末ミルや電動粉砕機がない場合は、電動コーヒーミルや高性能なブレンダーを使用してください。
粉砕した後に「細かいメッシュのふるい」にかけ、残った粗い粒は再度ミルにかける、を繰り返すと市販の小麦粉のような滑らかな卵殻パウダーを作ることができます。
手順5:保存
完成した卵殻パウダーは、密閉容器(遮光ビンやジップロック)に入れ、湿気の少ない冷暗所で保存します。微量に含まれるタンパク質が湿気を呼ぶことがあるので、乾燥剤も入れてください。
1ヶ月程度を目安に使い切るようにしましょう。
卵殻パウダー作りで「やってはいけないこと」

「健康に良い」と思って卵殻パウダーを作り始めたのに、逆に体を悪くしてしまっては意味がありません。初心者が陥りがちなミスを5つ紹介します。
煮沸前に殻を放置する

割った後の卵の殻を数日間キッチンに放置してはいけません。殻に残っているわずかな白身は非常に腐敗しやすく、雑菌の温床になります。
卵を割って中身を出したら、殻はすぐに洗うか、水に浸けておくのが鉄則です。
生卵の殻をそのままミキサーにかける

「後で加熱すればいい」と考え、煮沸前に粉砕するのは危険です。ミキサーがサルモネラ菌に汚染され、開けたときにキッチン全体に飛散する可能性があります。
必ず「加熱殺菌してから粉砕」の順番を守ってください。
粒が粗い状態で食べる

「ゴリゴリ」とした食感が残っている状態では、食道や胃の粘膜を傷つける危険性があります。また、粒子が粗いと消化吸収率も下がります。
手間に感じても、必ず細かいパウダー状になるまで加工してください。
湿ったまま保存する

乾燥が不十分なまま容器に入れると、カビが発生する原因になります。
乾燥工程では、手で触って「パリッ」と音がして簡単に崩れる状態まで、しっかり水分を飛ばしましょう。
薬との飲み合わせを気にしない

特定の抗生物質や骨粗鬆症の治療薬、甲状腺ホルモン剤などは、カルシウムと一緒に摂ると薬の吸収が妨げられることがあります。
持病があり薬を服用している方は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
卵殻パウダーをどう食べる?毎日続けられる活用レシピ

せっかく作った卵殻パウダーも、食べ方が分からなければ宝の持ち腐れです。カルシウムは1回で大量に摂取するよりも、毎日の食事に少量ずつ混ぜて食べるほうが健康になります。
味を邪魔せず、効率的にカルシウムを補給できるレシピとアイデアを紹介します。
スムージーやプロテインに混ぜる

最も手軽なのは、朝のスムージーや運動後のプロテインシェイクに小さじ4分の1程度の卵殻パウダーを加える方法です。パウダーが十分に細かければ、食感に違和感を感じることはほとんどありません。
バナナやベリー系のフルーツと一緒にミキサーにかければ、風味は変わりません。
自家製ふりかけを作る

卵殻パウダーに、煎りごま、青のり、かつお節、少量の塩を混ぜて「カルシウムふりかけ」を作ります。このふりかけをご飯にかけるだけで、不足しがちなミネラルを補えます。
育ち盛りの子供がいる家庭では、おにぎりに混ぜてもいいかもしれません。
煮込み料理やスープの隠し味

カレー、シチュー、味噌汁、ミネストローネなどの汁物・煮込み料理は、パウダーを混ぜるのに最適です。液体に混ざることで粉っぽさがなくなり、味を一切変えることなく栄養価だけを高めることができます。
パンやクッキーの生地に練り込む

お菓子作りやパン作りが趣味の人なら、小麦粉の一部(1〜2%程度)を卵殻パウダーに置き換えてみてください。焼き上がりの食感にはほとんど影響を与えないで、自家製の「カルシウム強化パン」や「骨太クッキー」が完成します。
炊飯時に入れる

お米を炊く際に、卵殻パウダーを少量加えます。炊き上がったご飯は見た目も味もいつも通りですが、一膳あたりのカルシウム含有量は大幅にアップします。
家族に気づかれずに健康管理をしたい場合にも非常に有効なテクニックです。
美容・スキンケアへの応用:卵殻膜とパウダーの力

卵の殻の価値は、食べるだけではありません。実は、美容業界では「卵殻膜(らんかくまく)」が高級美容成分として取引されています。
家庭でもできる、卵の殻を使ったセルフケア方法を紹介します。
卵殻膜パックでエイジングケア

卵を割った直後に殻の内側に残っている薄い膜を剥がします。剥がした卵殻膜を直接、乾燥や小じわが気になる部分(目尻など)に貼り付け、乾くまで放置します。
卵殻膜には、人間の肌の弾力を司る「III型コラーゲン(ベビーコラーゲン)」の生成を助ける成分が含まれています。
剥がした後は、ぬるま湯で洗い流し、いつもの保湿ケアを行ってください。
天然のスクラブで美肌ケア

微細に粉砕した卵殻パウダーは、優れた天然のスクラブ剤になります。洗顔料や、少量のハチミツ・ヨーグルトと混ぜて、小鼻の周りなどを優しくマッサージしてください。炭酸カルシウムの粒子が、古い角質や毛穴の汚れを優しく取り除いてくれます。
パウダーの粒子が荒いと肌を傷つける可能性があるため、必ず「煙のような微粒子」になったものを使用してください。回数も週に1回程度にしてください。
卵殻パウダーを加えてネイルケア(爪の補強)

爪も髪も、主成分はタンパク質ですが、その硬さを維持するためにはミネラルが必要です。
透明なマニキュア(トップコート)に少量の微細な卵殻パウダーを混ぜて塗ることで、物理的に爪を補強します。また、カルシウム成分を補給する「ネイルハードナー」として活用している人もいます。
庭や家庭菜園での活用:最強の天然肥料

「食べるのは少し抵抗がある…」という人でも、園芸への活用ならすぐに始められるはずです。卵の殻は、植物にとっても最高の栄養源になります。
土壌の酸度(pH)調整

日本の土壌は、雨が多い影響で酸性に傾きやすい性質があります。多くの野菜や花は弱アルカリ性から中性の土を好むため、一般的には石灰を撒いて調整しています。
卵の殻の主成分である炭酸カルシウムは、まさに「天然の石灰」です。粉砕した卵の殻を土に混ぜ込むことで、酸性土壌を中和し、植物が育ちやすい環境を作ります。専門の肥料ほどの即効性はありませんが、「家庭から出るものを再利用する」というエコ精神の実行になります。
- トマト・ナス・ピーマン
夏野菜の代表格。カルシウム欠乏による尻腐れ病を防ぐため、植え付け時に土の深い部分に混ぜます。 - ほうれん草
酸性土壌に非常に弱いため、卵殻パウダーを多めに撒いて土壌を中和させると驚くほどよく育ちます。 - バラ
丈夫な茎と鮮やかな花を咲かせるためにカルシウムを必要とします。株元に定期的にパウダーを追肥しましょう。
- ブルーベリー
酸性の土を好むため、卵殻を撒きすぎると土壌がアルカリ性に傾き、生育が悪くなります。 - ツツジ・サツキ
これらも酸性土を好むため、卵殻の与えすぎには注意が必要です。
粉砕した殻を土に混ぜるだけでは、分解・吸収までに時間がかかります。すぐに効果を出したい場合は、酢200ml〜300mlに卵の殻を2~3日入れて溶かし、それを水で500倍〜1000倍に薄めて液肥として与えてください。植物が直接カルシウムを吸収できるため、生育不良の改善に即効性があります。
また、荒く砕いた卵の殻をプランターの底に敷いて排水性を補助するなど、身近な園芸の工夫として取り入れられることもあります。
トマトの「尻腐れ病」予防

トマトやピーマンを育てていると、実の底が黒く腐ってしまうことがあります。これは病原菌ではなく、圧倒的な「カルシウム不足」が原因です。
植え付けの際に、穴の底に砕いた卵の殻を敷き詰めたり、株元にパウダーを撒いたりすることで、カルシウムがゆっくりと吸収され、尻腐れ病を効果的に防ぐことができます。
害虫忌避剤(ナメクジ対策)

家庭菜園やガーデニングをしている人のあいだでは、卵の殻をナメクジ対策として使う方法が知られています。やり方はシンプルで、洗って乾燥させた殻を粗めに砕き、植物のまわりにドーナツ状に隙間なく撒くというものです。
ナメクジ対策になる理由は、ナメクジの体が柔らかく、ザラザラした硬い表面を嫌うと考えられているからです。砕いた殻の鋭い縁や凹凸が物理的なバリアとなり、近づきにくくなる可能性があると言われています。いわば“薬剤ではなく物理的に防ぐ”発想です。
ただし、効果にはばらつきがあります。雨で湿ると殻が柔らかくなり、障害物としての役割が弱まることもありますし、空腹のナメクジは乗り越えてしまう場合もあります。市販の忌避剤や専用資材と同等の効果を期待するのは難しいでしょう。
卵の殻によるナメクジ対策は、絶対的な解決策というよりも、「ちょっとした生活の知恵」。環境や状況に応じて、他の方法と組み合わせながら取り入れるのが現実的な使い方と言えます。
家事・掃除での驚きの活用術

卵の殻の硬度は、実は掃除にも最適です。化学物質を含まない、地球に優しいクレンザーとして家中をピカピカにできます。
再利用する場合でも、衛生面への配慮は欠かせません。卵の殻の表面には細菌が付着している可能性があるため、使用前に流水でよく洗い、十分に乾燥させてください。
ボトルや水筒の茶渋落とし

手が届かない細いボトルの底に付いた茶渋やコーヒーの着色汚れ。ここに砕いた卵の殻と少量の水、中性洗剤を入れて、口を塞いで激しく振ってください。
殻の破片がボトルの内壁に当たることで、汚れを物理的に削り落としてくれます。傷がつきにくい素材のボトルであれば、驚くほど綺麗になります。
焦げ付いた鍋の掃除

鍋の焦げ付きには、洗剤と一緒に卵の殻のパウダーを振りかけ、スポンジや丸めたラップでこすってみてください。市販の研磨剤入りのクレンザーと同じ役割を果たし、頑固な焦げを落としてくれます。
排水口のヌメリ取り

粗く砕いた卵の殻をネットに入れ、キッチンの排水口のゴミ受けに置いておきます。水が流れるたびに殻が動き、網目の汚れを叩き落としてくれるため、ヌメリの発生を抑えることができます。
消臭としての利用

卵の殻は、昔から「におい取りに使える」と言われています。卵の殻は多孔質(小さな穴がたくさん空いた構造)で、におい成分を吸着します。炭や重曹と同じ“物理的吸着”の消臭機能です。
利用する際は、必ず殻を十分に洗浄し、オーブンや天日でしっかり乾燥させてください。湿ったまま使用すると、かえって雑菌が繁殖し、においの原因になる可能性もあります。
乾燥させた後は、卵の殻を細かく砕き、小皿や不織布袋などに入れて、冷蔵庫や下駄箱、シンク下などに置くだけです。キユーピーでは卵の殻を配合した消臭ごみ袋を試作しています。
卵の殻に関する科学的研究と最新トピック

卵の殻の可能性は、家庭の台所を飛び越え、最先端の医療やテクノロジーの世界でも注目されています。
骨再生医療への応用
卵の殻の成分は、人間の骨に非常に近いため、人工骨の材料としての研究が進められています。卵の殻から抽出したヒドロキシアパタイトは、生体適合性が高く、骨の欠損部位の再生を促す骨再生材料として期待されています。
バイオプラスチックの充填剤
プラスチックの使用量を減らすため、ポリマーの中に卵の殻の微粉末を混ぜ込む研究も行われています。これにより、石油由来成分の比率を下げることができ、さらに卵の殻が持つ消臭抗菌効果が備わる可能性も。まさに究極のエコ素材です。
重金属除去フィルター
卵の殻の表面には無数の微細な穴(気孔)が開いています。この構造を活かし、排水中の鉛などの有害な重金属を吸着するフィルターとしての活用も研究されています。
廃棄物で水を浄化するという、素晴らしいサイクルが生まれます。
卵の殻に関するよくある質問

卵の殻について調べると、いくつか決まったフレーズが繰り返し登場します。「骨が強くなる」「牛乳よりカルシウムが多い」「少しなら問題ない」といった言葉です。
どれも一部は事実に基づいているものの、卵の殻のことを正しく理解していないと誤解してしまう表現でもあります。
卵の種類(白玉、赤玉)で殻の栄養は変わる?
赤玉(茶色の卵)の色の正体は、プロトポルフィリンという色素です。これは鶏のヘモグロビンの合成過程で作られるもので、栄養価そのものに直接的な影響を与えるものではありません。
研究データによれば、殻の厚みや硬度、カルシウムの結晶構造についても、白玉と赤玉で違いは見られません。したがって、高い卵でも安価な白玉でも十分に高品質なカルシウムパウダーを作ることが可能です。
卵殻パウダーの賞味期限は?
しっかりと洗浄・加熱・乾燥させたパウダーであれば、冷暗所保存で数ヶ月〜半年は持ちます。ただし、家庭での加工には限界があるため、1ヶ月程度を目安に使い切るのが最も安全です。
卵アレルギーがあっても大丈夫?
卵アレルギーの主な原因は白身に含まれるタンパク質(オボアルブミンなど)です。
殻や膜にも微量のタンパク質が含まれているため、重度の卵アレルギーがある人は、摂取を控えるべきです。また、空気中に舞ったパウダーを吸い込むことによる吸入アレルギーにも注意が必要です。
市販のカルシウムサプリとの違いは?
市販のサプリメントの多くは、石灰岩などを原料にした炭酸カルシウムを精製したものです。
卵の殻は、カルシウム以外にもマグネシウムやタンパク質などの「生物由来の複合成分」が含まれている点が異なります。自然な形に近いミネラル摂取ができるのがメリットです。
1日にどれくらい食べてもいい?
成人のカルシウム推奨量は1日650mg〜800mg程度ですが、卵の殻1個分には約2,000mg(2g)ものカルシウムが含まれています。つまり、1日に必要なカルシウム量は、卵の殻のわずか3分の1〜半分程度で賄えてしまう計算になります。
過剰摂取を防ぐため、1日小さじ4分の1(約0.5g〜1g)程度に抑えてください。
酸っぱいものと一緒に摂ると効果的?
卵の殻の主成分である炭酸カルシウムは、酸(クエン酸や酢酸)に溶けやすい性質があります。レモン汁や酢と一緒に摂取することで、カルシウムが「クエン酸カルシウム」や「酢酸カルシウム」という、より水に溶けやすく体内に吸収されやすい形に変化します。
市販のカルシウム飲料にレモン果汁が入っていることが多いのも、この原理を利用しています。自家製の卵殻パウダーを摂取する際も、ドレッシングに混ぜたり、レモン水に溶かして飲んだりすることで、吸収効率を最大化させることができます。
殻をそのまま食べると結石になる?
かつてはカルシウムの摂りすぎが尿路結石の原因と思われていましたが、現在ではむしろ「適切なカルシウム摂取は結石のリスクを下げる」ことが分かっています。
カルシウムは腸内で結石の元となるシュウ酸と結合し、便として一緒に排出されます。シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、タケノコ、チョコレートなど)を食べるときは、カルシウムも一緒に食べると、尿路結石の予防につながることが医学的に証明されています。
卵殻パウダーをシュウ酸の多い料理に振りかけるのは、理にかなった防御方法です。
卵の殻は地球と私たちが共有する「未来の栄養資源」

卵の殻は、単なる“外側の殻”ではありません。主成分である炭酸カルシウムは、骨や歯の形成に関わる重要なミネラルの供給源として研究されてきました。さらに、卵の殻は微量ながらマグネシウムやリンなども含まれており、カルシウムの働きを支える栄養バランスの観点からも注目されています。
日本や海外の研究では、適切に処理された卵殻カルシウムが栄養素材として評価され、吸収性や利用効率が検討されています。これは、食品廃棄物と見なされてきた殻の中に、実は“再活用可能な栄養資源”が眠っていることを示しています。石灰石やサンゴと同じ成分が、私たちの食卓の副産物として手元にある――その事実は、資源の見方を少し変えてくれます。
また、卵殻カルシウムはバイオプラスチックの充填剤などの素材としても評価され、環境分野での応用も模索されています。つまり卵の殻は、「食べるかどうか」という議論を超えて、資源として再活用される可能性を秘めた存在なのです。
卵の殻は、単なるゴミではなく、未来の栄養資源として再評価されつつある素材。私たちの体と地球環境の両方を支える可能性を秘めています。

