バスの座席はどう決まる?配置の理由と優先席・補助席の違いをわかりやすく解説

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普段何気なく利用している「バス」。通勤・通学で利用する路線バスから、旅行で乗る観光バス、長距離を移動する高速バスや夜行バスまで、私たちの生活においてバスは非常に身近な交通手段です。

そんなバスに乗る際、みなさんは「どの座席に座ろうか」と迷ったことはありませんか?

「できれば車酔いしない席がいい」
「周りを気にせずゆっくり眠りたい」
「すぐに降りられる席がいい」

など、目的によってベストな座席は異なります

しかし、バスの車内を見渡してみると、座席が場所によって違うことに気付くはずです。段差の上に座席があったり、前を向いている座席もあれば横を向いている座席もあったり。バスの座席は配置によって様々な工夫と理由が隠されています。

また、誰もが知っている「優先席」や、通路側に折りたたまれている「補助席」についても、

「優先席はどんな時に誰が座っていいのか?」
「補助席は安全なのか?」

と疑問に思ったこともあるのではないでしょうか。

本記事では、「バスの座席」に関するあらゆる疑問を徹底的に解説します。路線バスと高速・観光バスの座席配置の違いやその理由から始まり、優先席の正しいルールとマナー、補助席の仕組みや法的な扱いについて分かりやすく紐解きます。

さらに、「車酔いしにくい座席」や「一番安全な座席」といった目的別のベストシートの選び方や、明日誰かに話したくなるような面白い雑学・豆知識までお届けします。

本記事を最後まで読めば、次にバスに乗るとき、座席選びが格段に楽しくなり、より快適で安全なバスライフを送ることができるようになるでしょう。

目次

路線バスの座席配置はどう決まる?構造と設計の秘密

街中を走る路線バス(乗り合いバス)に乗ると、前方は横向きの長い座席(ロングシート)や1人掛けの座席が多く、後方に行くと床が高くなって2人掛けの前向き座席があることに気がつきます。この独特な座席配置には、乗客の利便性とバスの車体構造(メカニズム)という2つの理由が大きく関係しています。

ノンステップバスの普及と床の高さ

現代の路線バスの座席配置を語る上で欠かせないのが「ノンステップバス」の存在です。

昔の路線バスは、乗降口に2つの段差(階段)がある「ツーステップバス」が主流でした。床全体が高く平らであったため、座席も比較的自由に配置することができました。

しかし、高齢者や車椅子利用者、ベビーカーを引く人たちにとって、この高い段差は大きな障壁です。そこで、バリアフリー新法の施行などもあり、現在では乗降口に段差のない「ノンステップバス」が標準となっています。

ノンステップバスは、乗降口から車内の中央付近までの床を極限まで低く設計されています。しかし、バスを走らせるための「タイヤ」と「エンジン」は物理的に存在するため、車内の空間にはどうしても制約が生まてしまいます。そのため、タイヤを覆う部分(タイヤハウス)が車内に大きく出っ張ることになりました。

出っ張りの上に座席を配置しているため、前輪の上の座席は非常に高い位置にあったり、足元が狭かったりしています。

前輪の上の座席(通称「オタ席」)

前輪の上の座席は高い場所に設置されている

バスの前輪の真上の席は最前列で、場所で言うと運転席のすぐ後ろや、乗降口のすぐ後ろの席になります。バスファンからは「オタ席」などと呼ばれ、非常に人気です。なぜなら、この座席は前方の景色がひらけていて、運転手のハンドルさばきや計器類を見ることができる特等席だからです。

しかし、構造的な視点で見ると、前輪の上に設置してある席なので、床からかなり高い位置にあります。よじ登るようにして座らなければならない車両も多く、足腰の弱い高齢者には不向きです。そのため、このエリアは一般席とされ、優先席に指定されることはほとんどありません。

ノンステップバスの中には、前輪左の上に燃料タンクが設置されていて、乗降口のすぐ後ろに席がない車両もあります。

車両後部が階段状になっている理由

バス車両の後方は階段状で高いところに座席がある

ノンステップバスに乗って中扉(後扉)より後ろに進むと、階段のような段差があり、後方の座席は位置が高くなっています

この理由は「エンジンの位置」と「駆動系パーツ」にあります。日本の多くの路線バスは「リアエンジン・リアドライブ(RR方式)」を採用しています。つまり、車体の最後尾に巨大なエンジンが搭載されており、後輪を回して走っているのです。

車体の後半部分に、エンジン、トランスミッション、プロペラシャフト、燃料タンクといった重厚な機械類がぎっしりと詰め込まれているため、これらの機械を避けるためには、どうしても車体後方の床を高くしないといけません。その結果、後方の座席は高い位置に配置され、前向きの2人掛けシートが並ぶ配置になっているのです。

前方に横向きシート(ロングシート)や1人掛けが多い理由

バスの前方は低く平らで通路を確保

路線バスの前半部分(前扉から中扉の間)に、電車のような横向きの長い座席(ロングシート)や1人掛け(シングルシート)が多く配置されているのは、「通路を広く確保するため」です。

路線バスは、短い距離で多くの人が頻繁に乗り降りします。朝夕のラッシュ時には、座席数よりも「いかに多くの人が立てるか(立席定員)」と「いかにスムーズに奥へ進めるか」が重要になります。

もし前方に2人掛けの前向きシートを配置してしまうと通路が狭くなり、乗り降りに時間がかかってダイヤが乱れる原因にもなります。

車椅子やベビーカーを固定するためのスペースを確保するために、一部の座席を折りたたみ式にしたり、最初から座席をなくしたりする設計になっている車両もあります。

観光・高速バスの座席配置!快適性と効率の追求

観光・高速バスは快適重視の座席配置

路線バスが「乗り降りのしやすさと立席定員」を重視しているのに対し、観光バスや高速バスは「着席時の快適性と積載量(トランク)」を重視して設計されています。そのため、座席の配置ルールも路線バスとは大きく異なります。

床が高いハイデッカー構造の理由

観光バスや高速バスに乗る際、数段の階段を上って車内に入ります。これは「ハイデッカー(高床式)」と呼ばれる構造です。また、もっと床が高い「スーパーハイデッカー」という車両もあります。

なぜわざわざ床を高くするのでしょうか?主な理由は以下の3つです。

観光バス・高速バスの床が高い理由
  • 巨大な荷物室(トランクルーム)の確保
    乗客全員分のスーツケースやお土産を収納するため、床下(ホイールベース間)に広大な荷物室を作る必要があります。
  • 見晴らしの向上
    床を高くすることで窓の位置が上がり、乗客が外の景色を楽しみやすくなります。ガードレールや防音壁に視界を遮られにくくなります。
  • 静粛性の向上
    座席をタイヤやエンジンなどの騒音源から物理的に遠ざけることで、車内の静かさを保つことができます。

また、床全体が平らで高い位置にあるため、路線バスのようにタイヤハウスが車内に出っ張ることはなく、すべての座席が同じ高さで均等に配置することが可能になっています。

観光バスの座席数(11列と12列の違い)

一般的な大型観光バス(12メートル車)の場合、座席は横4列(2席+通路+2席)で配置されます。縦の列数によって、バスの性格が大きく変わります。

11列シートと12列シート
  • 11列シート(定員45名+補助席)
    現在の観光バスの主流です。座席の前後の間隔(シートピッチ)が比較的広く、大人が座っても足元に余裕があります。長距離のバスツアーなどで快適に過ごせます。
  • 12列シート(定員49名+補助席)
    同じ車体の長さに1列多く座席を詰め込んだ仕様です。一度に多くの乗客を運べるため、近距離の送迎バスや、学生の修学旅行、コスト重視の格安ツアーなどに使われています。しかし、シートピッチが狭く、リクライニングを倒すと後ろの人の膝に当たってしまうため、長時間の乗車には不向きです。

トイレ付きバスの座席配置の工夫

高速バスや長距離観光バスには、車内にトイレが設置されている車両が多くあります。トイレの位置によって、座席の配置は微妙に変化します。

トイレの位置
  • 後部トイレ
    最後列の片側(主に左側)にトイレを設置するタイプです。最後列の座席数が減りますが、他の座席の配置に影響を与えないのがメリットです。
  • 中央床下トイレ
    車両の中央(階段を下りたところ)にトイレを設置するタイプです。この場合、トイレのある位置の座席がなくなるため、全体の座席数が減りますが、車内の見通しが良くなり、どの席からもトイレに行きやすくなります。

特別な座席配置「サロンバス」

観光バスの中には、車体後部の座席(2列分など)を回転させ、コの字型にして中央にテーブルが置ける「サロンバス」と呼ばれる仕様があります。社員旅行や町内会の旅行などで、後ろの席で宴会やトランプなどのゲームを楽しんだりできるように作られた特別なバスです。

ただし、近年はシートベルトの着用義務化や、プライベートを重視する旅行形態の変化により、サロンバスの需要は減少しつつあります。

優先席のルールとマナー!対象者は誰?配置場所の理由

バスに乗ると必ず目にする「優先席」。ステッカーで分かりやすく明示され、座席の布地(モケット)の色も一般席と違うことがほとんどです。

しかし、「優先席が空いているとき、一般の人は座っていいのか?」「どこからが高齢者なのか?」など、優先席にまつわる疑問やトラブルは後を絶ちません。

優先席の正しい知識を深掘りしていきます。

優先席の歴史:「シルバーシート」からの変遷

そもそも優先席はどのようにして生まれたのでしょうか。

日本の公共交通機関において特定の座席を確保する取り組みは、1973年(昭和48年)9月15日の敬老の日に、国鉄(現在のJR)中央線の電車内に設けられた「シルバーシート」が始まりとされています。その後、私鉄や路線バスにもこの制度が普及しました。

当初は文字通り、高齢者(シルバー世代)や身体の不自由な人を対象としたものでした。

座席の色を一般の座席の色と違うようにするために、新幹線の普通車の座席に使われていた余りの布(シルバーグレーの色)を使ったことから「シルバーシート」と名付けられたという有名な逸話があります。

しかし、1990年代後半になると、「高齢者や身体障害者だけでなく、妊婦や乳幼児連れ、怪我をしている人など、支援を必要としている人は他にもたくさんいる」という意見が多くなりました。これを受け、各交通事業者は名称を「シルバーシート」から「優先席(Priority Seat)」へと名称を変更し、対象者を拡大していったのです。

現在では、路線バスでも「優先席」という名称が一般的になりました。

優先されるべき対象者とは?目に見えない障害への配慮

現在の優先席は、主に以下の人たちを優先して座ってもらうための座席です。

優先席の対象者
  • 高齢者
    足腰が弱り、揺れる車内で立ち続けるのが困難な人。年齢による明確な基準はありませんが、本人が辛いと感じる場合や、周囲から見てサポートが必要と思われる人が対象です。
  • 身体の不自由な人
    杖をついている人、車椅子の人(専用スペースを使用)、義足の人など。
  • 妊婦
    特にお腹が目立たない妊娠初期は、つわりなどで体調が不安定になりやすい時期です。「マタニティマーク」をつけている人には積極的に席を譲りましょう。
  • 乳幼児を連れている人
    赤ちゃんを抱っこしている人や、小さな子どもと手をつないでいる人は、両手が塞がっていたり、とっさの揺れに対応できなかったりするため危険です。
  • 内部障害や難病を抱えている人
    心臓病や人工透析を受けている人など、外見からは健康そうに見えても、立っているのが非常に辛い人がいます。こうした人たちは「ヘルプマーク(赤字に白い十字とハートのマーク)」を身につけていることが多いので、マークを見かけたら席を譲る配慮が必要です。
  • 怪我をしている人・体調の悪い人
    骨折している人や、一時的に体調を崩している人も当然対象になります。

路線バスにおける優先席の配置場所とその理由

バスの優先席は前後の扉の間が多い

路線バスの優先席は、一般的に前扉(乗車口または降車口)のすぐ近くで、段差のない低い床(フラットな部分)に配置されています。前輪のすぐ後ろの横向き座席や、その次の前向き1人掛け座席などが選ばれることが多いです。

この座席の配置には明確な理由があります。

対象となる人たちは、歩行に不安を抱えている可能性が高く、バスに乗ってから座るまでの移動距離を短くしたいのです。降りるときも同じで、すぐに出口に移動できる座席でなければなりません。また、ノンステップバスの後方は階段(段差)があるので、足腰の弱い人には転倒のリスクがあり非常危険です。

そのため、車内で最も安全に移動できる前方・低床部分が優先席に指定されています。

「専用席」ではなく「優先席」であることの意味

優先席に関する最も多い疑問が「対象者がいないとき、一般の健常者が座っても良いのか?」というものです。

結論から言えば、空いているときは誰が座っても全く問題ありません

なぜなら、それは「優先席(Priority Seat)」であり、「専用席(Exclusive Seat)」ではないからです。車内が混雑しているときに優先席を空けたままにしておくのはスペースの無駄使いであり、逆に通路が混雑し、危険な状態になる場合もあります。

しかし、重要なのは「対象となる人が乗車してきたら、速やかに、かつ快く席を譲る」ということです。近年はスマートフォンの画面に夢中になっていたり、ノイズキャンセリングイヤホンで音楽や動画の世界に没入していたりして、周囲の状況(特に、席を必要としているお年寄りや妊婦さんがすぐ隣に立っていること)に気づかないケースが社会問題化しています。

優先席に座る場合は、一般席に座るとき以上に周囲への目配りと配慮が求められるということを肝に銘じておきましょう。

バスは電車と違って揺れが激しく、急ブレーキを踏む可能性もあるため、立っているのが困難な人にとっては数分の乗車でも大きな負担になります。「次の停留所で降りるからいいだろう」と思わず、気づいた時点ですぐに声をかけ、席を譲るのがベストな対応です。

席を譲る際のマナーと「声かけ」のコツ

優先席を譲るときは気付いたらすぐに声かけ

「席を譲りたいけれど、断られたらどうしよう」
「相手を年寄り扱いして怒らせてしまわないか」

と、声をかけることに抵抗を感じる人も少なくありません。

スマートに席を譲るためのコツを紹介します。

声かけのコツ
  • 無言で立ち上がる
    一番ハードルが低く、かつ相手にプレッシャーを与えない方法です。相手と目が合ったタイミングなどで無言でスッと立ち上がり、別の場所へ移動します。相手は「自分のために空けてくれたんだな」と察して座りやすくなります。
  • 「ここ、どうぞ」と短く声をかける
    長々と理由を説明するよりも、「どうぞ」と一言添えて席を立つ人のほうが、相手も「ありがとう」と返しやすくなります。
  • 「次の停留所で降りますので」という方便を使う
    相手に気を使わせないための優しい嘘です。自分が立つ正当な理由を作ることで、相手は申し訳なさを感じることなく座ることができます。

補助席の仕組みと法的な扱い!いつ、誰が座る?安全性は?

観光バスや高速バスの通路側に折りたたまれている「補助席」。学生時代の修学旅行などで、ジャンケンで負けて補助席に座ることになり、悔しい思いをした経験がある方も多いのではないでしょうか。

補助席には、明確な存在理由と厳しいルールが定められています。

補助席とは何か?なぜ存在するのか

補助席(折りたたみ式座席)は、本席(正規の座席)とは別に、通路などのスペースに一時的に展開して使用できる簡易的な座席のことです。路線バスには基本的に設置されてなく、観光バスや一部の昼行高速バス、送迎用バスに設置されています。

補助席が存在する最大の理由は「いざという時に、1人でも多くの乗客を運ぶため」です。

例えば、定員45名(本席のみ)のバスに、49名の団体が乗りたいとします。もし補助席がなければ、バスを2台手配しなければならず、コストが跳ね上がってしまいます。補助席が数席あることで1台のバスで輸送が可能になり、経済的・効率的メリットにつながるのです。

しかし、あくまで「補助」であるため、本席に比べるとクッションが薄く、背もたれも低く、リクライニング機能やアームレスト(ひじ掛け)、ドリンクホルダーなどの快適装備は一切省かれています。長時間の乗車には非常に不向きな座席です。

補助席に座って高速道路を走っても安全なのか?

補助席に座って高速道路を走行することは法律上まったく問題ありませんし、安全基準も満たしています

2008年(平成20年)の道路交通法改正により、後部座席を含めた「すべての座席にシートベルトの着用」が義務化され、当然、補助席にも適用されました。現在の観光バス・高速バスの補助席にも、必ず2点式(腰のみ)または3点式のシートベルトが装備されています。

「補助席だからシートベルトをしなくてもいい」という勘違いは絶対にやめ、着席したら直ちにシートベルトを締めましょう。

万が一の事故の際、シートベルトをしていないと車外に放り出されたり、前方の座席に激突したりして大怪我をする可能性があります。

高速乗合バス(路線バスタイプの高速バス)における補助席の扱い

予約制の長距離夜行高速バスなどでは、補助席を利用する乗客を募集することは原則としてありません。なぜなら、長時間・長距離の移動は、補助席では疲労が激しく、商品価値として適さないからです。

しかし、予約不要で先着順に乗車する近距離の高速バス(例:東京湾アクアラインを通る高速バスなど)では、本席が満席になった場合、運転手の案内によって補助席を開放し、乗車を受け入れるケースが多々あります。

この場合、補助席の運賃も本席と同じ料金が請求されることがほとんどです。「座り心地が悪いのに同じ値段はおかしい」と感じるかもしれませんが、運賃は「座席の質」ではなく「A地点からB地点へ人を運ぶ輸送サービス」に対する対価であるため、法律上も同一料金で問題ありません。

補助席を使うと通路が塞がる!緊急時の脱出はどうなる?

バスにも非常口がある

補助席を展開すると、車内の中央通路が完全に塞がれてしまいます。「もしバスが事故を起こしたり、火災が発生したりしたときに、奥にいる人は逃げられないのではないか?」と不安に思うかもしれません。

この点については、国土交通省の「道路運送車両の保安基準」によって厳密なルールが定められていて、バスの窓の一部が「非常口」として機能するように設計されています。

近年製造される観光バスは、補助席をなくして本席の幅を広げたり、通路を広く取ったりする「補助席なし仕様」が主流のようです。安全性と快適性の向上を目指した業界のトレンドと言えるでしょう。

目的別ベストシートの選び方!車酔い・安全・睡眠の最適解

バスに乗る際、路線バスや高速バスでは、「どこに座るか」で乗車体験が大きく変わります。

バスに乗った「目的」や、バスに対する「悩み」に合わせたベストな座席の位置を科学的・経験的な視点から解説します。

車酔いしやすい人にとっての「神席」

バス特有の揺れや臭いですぐに車酔いしてしまう人にとって、座席選びは重要な問題です。車酔いを防ぐためのベストな座席は以下の条件を満たす場所になります。

車酔いしない座席
  • 前輪と後輪の中間(バスの中央付近)
    バスはタイヤを支点にしてシーソーのように前後に揺れます。つまり、前輪や後輪の真上、あるいは最後尾のオーバーハング(後輪より後ろに飛び出た部分)は、上下の揺れが最も激しくなります。逆に、前後のタイヤのちょうど中間付近は、物理的に最も揺れが少なく、安定している場所です。
  • 前方の景色(進行方向)が見える席
    車酔いは、目から入る視覚情報(景色)と、耳の奥にある三半規管が感じる揺れの情報の「ズレ」によって引き起こされます。前方の窓から流れる景色や、カーブの先の状況を予測できる席に座ることで、脳の混乱を防ぐことができます。スマートフォンや読書など、下を向く行為は厳禁です。
  • 路線バスなら「前扉のすぐ後ろの前向き席」
    揺れが少なく、前方の視界が広く、かつ降りる時のストレスが少ないため、酔いやすい人には最適です。

タイヤの真上は揺れがダイレクトに伝わるだけでなく、タイヤと路面が摩擦する「ロードノイズ」や振動も激しいため、酔いやすい人は避けるべき座席です。

事故が起きたときに「安全な座席」

「万が一、バスが事故に遭ったとき、一番助かる確率が高いのはどこか?」という考える人もいるでしょう。

これについては様々な見解や海外の研究データが存在しますが、絶対的に安全な座席というものは存在しません。なぜなら、事故の形態(正面衝突、追突、横転など)によって危険な場所が変わるからです。

しかし、一般的な傾向として以下のことが言われています。

安全な座席
  • 最も危険と言われるのは「最前列」と「最後列」
    最前列は前方の車や障害物に追突した場合、フロントガラスが割れたり、直接的な衝撃を受けたりしやすい場所です。また、最後列は後続の大型トラックなどに追突された場合、大きな被害を受けやすい場所です。
  • 比較的安全とされるのは「運転席側の後方(中央より後ろ)」
    日本のバスは右ハンドルです。人間(運転手)の心理として、危険が迫った時に無意識に自分(右側)を守るようにハンドルを切る傾向があると言われています。そのため、左側(助手席側)よりも右側(運転席側)の方が、正面衝突のときのリスクがやや下がるとする説があります。

どの席に座るかよりも、シートベルトを正しく着用しているかどうかのほうが、生死を分ける決定的な要素になります。高速バスでは、寝ている間も必ずシートベルトを着用し続けてください。

景色を楽しみたい人のための「特等席」

観光バスや昼行の高速バスを乗車中に窓から見える雄大な自然や夜景を楽しみたい場合は、座席選びが大切になってきます。以下をポイントを参考に座席を選んでみてください。

景色がよく見える座席
  • 最前列(特に左側の窓際)
    前方の巨大なフロントガラスから、まるで自分が運転しているかのようなパノラマビューを楽しめる文句なしの特等席です。
  • 進行方向の「日差し」を計算する
    景色を楽しむ上で厄介なのが「直射日光」です。例えば、午前中に東京から大阪(西向き)へ向かうバスの場合、太陽は南から当たります。つまり「左側の窓際」は常に強烈な日差しを浴びることになり、カーテンを閉めざるを得なくなります。この場合、直射日光を避けつつ景色を見られる「右側の窓際」を選ぶのが正解です。
  • 窓枠(ピラー)の位置に注意
    バスの座席間隔と窓枠の間隔は必ずしも一致していません。せっかく窓際を指定したのに、真横が太い窓枠(ピラー)で外が全く見えない「ハズレ席」があります。一部のバス予約サイトでは、座席表に窓枠の位置が明記されていることがあるので、事前にチェックすることをおすすめします。

長時間の夜行バスで「ぐっすり眠れる座席」

夜行バスでの睡眠は、翌日のパフォーマンスに直結します。少しでも快適に眠るための座席選びのポイントは以下のとおりです。

ぐっすり眠れる座席
  • 窓側・通路側のメリットとデメリット
    窓側は壁にもたれかかって眠れるという絶大なメリットがあります。しかし、トイレ休憩の際には、隣の人(通路側の人)を起こさなければ外に出られないという強烈なデメリットがあります。頻尿気味の人や気を使う人は通路側の座席がベストです。
  • 車両の「中央付近」を選ぶ
    車酔い対策と同じく、タイヤの上を避けることで突き上げの振動が少なくなり、熟睡しやすくなります。

最後列のシートは「後ろに誰もいないので、気兼ねなくシートを最大まで倒せる」という点で非常に人気があります。しかし、最後列はエンジンがすぐ真下にあるため、エンジンの重低音と微振動が直接体に伝わり、神経質な人はかえって眠れないこともあります。

進化が止まらない!最新高速バスの座席グレード徹底比較

かつての高速バスといえば「狭い・疲れる・眠れない」というネガティブなイメージがありましたが、現在は座席の進化が目覚ましく、新幹線や飛行機を凌駕するほどの快適性を誇る車両が次々と登場しています。

現在の高速バスに導入されている主な座席のグレードと特徴を比較します。

4列シート(スタンダード/ゆったり・のびのび)

最もポピュラーで価格が安いのが、通路を挟んで2席ずつ並ぶ「4列シート」です。

4列シートの種類と特徴
  • スタンダード(標準)
    一般的な観光バスと同じ、縦11列〜12列の仕様。シートピッチ(前後間隔)が狭く、隣の人と肩が触れ合うこともあり、肉体的な疲労は大きくなります。若者やとにかく交通費を抑えたい人向けです。
  • ゆったり4列(のびのびシート)
    座席の列数を縦9列〜10列に減らし、前後の間隔を広げた仕様。足元にフットレスト(足置き)やレッグレスト(ふくらはぎを支える板)が装備されていて、快適に過ごせます。

3列独立シート(夜行バスの絶対的スタンダード)

夜行バスで最も人気があり、各社が主力としているのが「3列独立シート」です。車内に1席ずつ、独立した座席が3列に並んでいて、隣の座席との間には通路があります。

3列独立シートの特徴
  • メリット
    隣の人と完全に離れているため、肩がぶつかるストレスが一切ありません。また、多くの3列独立シートには、座席の周りをぐるりと囲む「プライベートカーテン」が装備されています。カーテンを閉めれば、まるでカプセルホテルのような完全な個室空間となり、他人に寝顔を見られることもありません。
  • 座席の進化
    最近では、ゆりかごのように座面ごと傾く「クレイドルシート」や、無重力状態の姿勢を再現して体圧を分散する「ゼログラビティシート」など、人間工学に基づいた高級シートが標準装備されるようになってきています。

2列シート(完全個室型・走る高級ホテル)

現在の高速バスの最高峰に位置するのが、車内にわずか10席〜16席程度しか配置されていない「2列シート」です。代表的なものに、関東バスなどが運行する「ドリームスリーパー」があります。

2列シートの特徴
  • 特徴
    座席一つ一つがパーティション(壁)や扉で完全に区切られていて、完全に独立した個室になっています。座席はボタン一つで倒すことができ、最高級のマットレスやブランケットが用意されています。
  • 設備
    全席にコンセント、USBポート、無料Wi-Fiなどが完備。乗車時には靴を脱いでスリッパに履き替えるなど、高級ホテルのようなおもてなしを受けられます。移動しながら極上の睡眠を得られるため、ビジネスエグゼクティブや旅行者から熱狂的な支持を得ています。

「バックシェル型シート」の登場が変えたリクライニング問題

バックシェル型シート

夜行バスの悩みの種は、前の人がリクライニングを思い切り倒してきて自分の空間が狭くなることです。また、倒すほうも後ろの人に「倒していいですか?」と声をかけるかどうか、悩みを抱えることになります。

この問題を完全に解決したのが「バックシェル(ゆりかご)型シート」です。バックシェル型シートは、背もたれの後ろに固定された頑丈なプラスチックの殻(シェル)があり、リクライニングさせると、背もたれが後ろに倒れるのではなく、座面が前方にスライドしながらシェルの中で倒れる仕組みになっています。

バックシェル型シートの登場により、乗客はシートを倒すときに後ろを振り返って声をかける必要がなくなり、自分のタイミングで最大限のリラックス姿勢を取れるようになりました。まさに座席の歴史を変えた大発明と言えます。

明日誰かに話したくなる!バス座席の面白い雑学・豆知識

バスの座席の配置や種類について詳しく解説してきましたが、最後は視点を変えて、バスの座席に隠された面白い秘密や雑学をご紹介します。飲み会のネタや、バスに乗ったときのちょっとした話題作りに最適です。

なぜバスの座席の柄(モケット)はあんなに派手で幾何学模様なのか?

バスに乗って座席の布地(専門用語で「モケット」と呼びます)をじっくり見てみてください。青や赤、緑といった原色の生地に、不思議なドット柄、チェック柄、波模様など、非常に派手で複雑な幾何学模様が描かれていることに気づくはずです。無地のシンプルな座席はほとんどありません。

なぜこんなに派手な柄になっているのでしょうか?

派手な柄にするのには「汚れやシミ、ゴミを目立たなくさせるための錯視効果」という明確な理由があります。バスは不特定多数の人が土足で乗り込み、濡れた傘を持ち込んだり、飲み物をこぼしたりします。もし座席が無地の白や薄いベージュだと、少しのシミやホコリでも一目でわかってしまい、乗客に「汚い、不衛生」という不快感を与えてしまいます。

しかし、複雑な幾何学模様や複数の色が混ざった柄にしておくと、人間の目の錯覚(カモフラージュ効果)によって、細かなシミや糸くずが模様の一部に同化し、全く目立たなくなるのです。映画館やパチンコ店のカーペットが派手な柄になっているのと同じ原理です。

バス会社が「座席の布を張り替える費用を抑えるため」でもあります。

座席の生地(モケット)の素材が持つ特殊な機能

座席の生地(モケット)は、単なる布ではありません。バスという特殊な環境に耐えられる、非常に高性能な素材で作られた布なのです。

座席の生地(モケット)の特徴
  • 高い耐久性(耐摩耗性)
    毎日何百人もの人が座っても簡単には破れたり薄くなったりしないように、ウールやポリエステル、ナイロンなどの糸を特殊な比率で編み込んだ強靭な生地を使っています。
  • 難燃性(燃えにくさ)
    最も重要な機能です。万が一、車内でタバコの火の不始末などで車両火災が発生しても、座席が簡単に燃えないようにしなければなりません。そのため、国土交通省の厳しい「難燃性基準」をクリアした素材を使っています。火を近づけても焦げるだけで燃え広がらないような特殊な加工が施されています。
  • 滑りにくい
    ブレーキを踏んだときやカーブを曲がったときに、乗客のお尻がズルズルと滑らないよう表面には細かな起毛(毛羽立ち)が施されていて、適度な摩擦を生み出しています。

路線バスの「降車ボタン」と座席配置の緻密な計算

路線バスに欠かせないアイテムといえば「降車ボタン(とまりますボタン)」です。実は降車ボタンの配置も座席の位置と密接に関係していて、緻密に計算し配置されています。

現代のバリアフリー規格に適合したバスでは、「どの座席に座っていても、あるいは立っていても、乗客が無理な姿勢をとることなくボタンを押せる位置」に設置することが求められています。

そのため、窓枠の柱部分だけでなく、前の座席の背もたれの背面、手すりのパイプの途中、エアコンの吹き出し口付近など、あらゆる場所にボタンが配置されています。1台の路線バスにつき、およそ20〜30個もの降車ボタンが設置されているのです。

次にバスに乗ったときは、自分の座席の周りにいくつボタンがあるか数えてみるのも面白いでしょう。

最前列の席にはなぜ「仕切り」があるのか?

路線バスの最前列(運転席のすぐ後ろや、左側の一番前の席)に座ると、目の前に透明なアクリル板や金属製のパイプの仕切りがあることがわかります。

視界を遮るため少し邪魔に感じるかもしれませんが、仕切りには乗客と運転手の命を守る2つの役割があります。

仕切りの役割
  1. 急ブレーキ時の飛び出し防止
    最前列は前に座席がないため、急ブレーキを踏んだときに乗客がそのまま前方(フロントガラスや運転席)に放り出される危険性が最も高い座席です。仕切りはこれを防ぐための防護壁の役割を果たしています。
  2. 運転手への干渉・暴力行為の防止
    悲しいことですが、過去に乗客による運転手への暴力行為や、走行中にハンドルを奪おうとする事件が起きています。運転席の後ろに強固な仕切りを設けることで、運転手を物理的に守り、安全運行を確保する目的があります。

バスの座席は「奥深いメカニズムと思いやり」の結晶

普段何気なく座っている「バスの座席」について、路線バスと高速・観光バスの配置の仕組みから、優先席・補助席の正しいルール、目的別座席の選び方、そしてマニアックな雑学まで解説してきました。

おさらいとして、重要なポイントをまとめます。

バスの座席の雑学まとめ
  • 路線バスの座席配置
    ノンステップ化による床の低さとタイヤハウスの出っ張り、そして後部エンジンの配置という「車体の構造的制約」から考えられています。前方は立ちやすさ重視、後方は着席重視。
  • 観光・高速バス
    床を高く(ハイデッカー)することで広大なトランクを確保し、すべての座席を均等に配置して快適性を高めています。
  • 優先席
    「専用席」ではないので、空いていれば座っても良いですが、お年寄りや妊婦、内部障害を持つ人(ヘルプマーク着用者)などが乗車してきたら、すぐに席を譲りましょう。
  • 補助席
    輸送効率を高めるためのもので、高速道路での利用も合法ですが、必ずシートベルトを着用しなければなりません。
  • 座席選び
    車酔いを防ぐなら「中央付近で前が見える席」、夜行バスで熟睡するなら「独立3列シートのバックシェル型」を選ぶなど、目的に応じて最適な座席は変わります。
  • 座席の派手な柄(モケット)
    汚れを目立たなくするためのカモフラージュです。生地は難燃性で耐久性があるものが使われています。

バスの座席には「いかに安全に人を運ぶか」「いかに限られた空間で快適に過ごしてもらうか」という自動車メーカーの技術者たちの計算と工夫が詰め込まれています。そして同時に、優先席の譲り合いのように乗客同士の「思いやり」や「モラル」によってバスの車内空間は成り立っています

本記事で得た知識を胸に、次にバスに乗る時はぜひ車内をゆっくり見渡してみてください。「この座席が高くなっているのはタイヤがあるからだな」「このモケットの柄、よく見ると面白いな」と、これまでとは違った視点でバスを楽しめるはずです。

そして、自分にとって最高の座席を見つけて、安全で快適な素晴らしいバスの旅を満喫しましょう!

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