キリンの首はなぜ長いのか?3つの説と意外なデメリットを解説

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アフリカの広大なサバンナや乾燥した草原地帯に生息するキリン。その優雅で威厳のある姿は、特に際立った長い首が特徴です。この首は一般的に1.5メートルから2.5メートルの範囲であり、現存する動物の中でも非常に目を引く存在感を醸し出しています。

なぜ、キリンはこれほどまでに長い首を進化させたのでしょうか?生物学者たちの間で100年以上にわたり論じられてきました。キリンの首が長くなった説を3つ紹介します

キリンの首が長くなった3つの説
  • 高い木の葉を食べるため
  • オス同士の戦いに勝つため
  • 突然変異

上記以外にもさまざまな仮説が存在しますが、依然として明確な答えは出でいません。

当記事では、キリンの首が長くなった説とデメリット、首が長くなったことで起きた体の変化について、わかりやすく解説していきます。

目次

キリンの首が長くなった3つの説

説1.高い木の葉を食べるため

キリンの首が長い最大の理由として広く知られているのが、「高い木の葉を食べるため」という説です。

サバンナでは乾燥期になると地面に生えている草が少なくなりますが、キリンは他の動物が届かない高い位置の葉っぱを食べることができます。特にアカシアの木など、背の高い木の葉を主食にできたことで食物競争において有利な立場を得てきました。

食物競争で勝った長い首のキリンは生存しやすくなり、首が長いという特徴は世代を超えて受け継がれてきたと考えられています。

説2.オス同士の戦いに勝つため

食物説と同じくらい有力な説が「オス同士の戦いに勝つため」という説です。

キリンのオスは、繁殖期になるとメスをめぐって「ネッキング」と呼ばれる首を使った激しい戦いを繰り広げます。長い首と重い頭を武器にしてオス同士で打ちつけ合い、より強いオスが勝者となり繁殖の機会を得ます。

ネッキングで勝者したオスが繁殖機会を得られた結果、首が長いという特徴が進化の過程で強調されたと考えられています。

説3.突然変異

キリンの首が長くなったのは、首の長さが少しずつ伸びたという進化ではなく、「首が長くなる遺伝子情報を持った個体が突然現れた」という説があります。

突然変異という考えが提唱された背景には、短い首から長い首になるまでの中間の首のキリンの化石が見つかっていないことがあります。突然変異で首が長くなったキリンが偶然出現したことで、生存に有利であった首の長いキリンが生き残り子孫を増やしたとされるのです。

また、首を長くする遺伝子を持ったウイルスがキリン全体に感染し、急激に首が長くなったという説もあります。しかし、首の長さの変化には単一の遺伝子変異だけでは説明しきれないため、広く受け入れられてはいません。

キリンの基本情報

生息地アフリカ大陸のサハラ砂漠以南の乾燥した地域
種類4種類
アミメキリン、マサイキリン、キタキリン、ミナミキリン
体長オス:5~6m
メス:4~5m
体重オス:800~1900kg
メス:550~1200kg
首の長さ1.5m~2m
舌の長さ最大で50cm
角の本数合計5本
頭頂部:2本
額:1本
後頭部:2本(正確には頭骨の一部)
食べ物主にアカシアの葉
木の葉や樹皮、小枝
※草はほとんど食べません
1日の食事量45kg
寿命野生:10~15年
飼育:20~27年(最高齢:32年)
走る速さ最高時速60km/h

首が長いことのデメリット

キリンの首の長さは餌を効率よく得るために有利に働いてきましたが、同時に多くのデメリットも背負う結果となりました。

キリンを象徴する長い首は美しい特徴ではありますが、自然界における進化は常にメリットとデメリットのせめぎ合いであることがよくわかります。

デメリット1.バランスの悪さ

キリンの首の長さは1.5~2mもありますが、首より上の重さは130~180kgにも及びます。

そのため、体全体のバランスをとるために、脚や背骨にも大きな負担がかかります。特に走行時には、首の動きと体幹のバランスを保つ必要があり、急な動きには不向きです。

首が長いことで体全体のバランスが崩れやすく骨や筋肉に大きな負担がかかり、転倒や骨折のリスクも増加します。

デメリット2.心臓への負担が大きい

首が長いキリンにとって、血液を頭まで送るには非常に高い血圧が必要です。

そのため、キリンの心臓は約10~12kgもの重さがあり、非常に強力に進化しました。しかし、心臓への負荷は大きく、循環器系のトラブルが発生しやすいリスクもあります。

また、水を飲むために首を下げると脳に急激な圧がかかるため、血圧の急激な変化を緩和できる特殊な血管構造になっています。特殊な血管構造のおかげで、脳貧血や脳出血を防ぐことができるのです。

デメリット3.地上の草を食べにくい

首が長いことで高いところの葉を食べられる反面、地面近くの草を食べるのが苦手です。首が長すぎるためにかがむのが困難で不自然な姿勢を強いられます。

水を飲むときなど前足を大きく広げて体を低くすると無防備になり、肉食動物に襲われやすくなります。

デメリット4.捕食者からの逃げ遅れ

キリンは走るのが速いですが、不安定な長い首や長い脚が災いして一度横になると立ち上がって走り出すまでに時間がかかります。そのため、立ったまま寝ることがほとんどです。浅い眠りを何回も繰り返し、1日に2~4時間程度眠ります。

また、長い首のため、方向転換も苦手です。特に子どものキリンや高齢個体は、ライオンなどの捕食者から逃げ切れないこともあります。

首が長いことで必要となった体の変化

首が長くなることで、キリンの体にも独特な進化が見られます。下記の体の変化によって、長い首を持つ体でも健康に生きられる構造が整っています。

キリンの体の変化
  • 巨大で強力な心臓:高い首の先まで血液を送り届けるため。
  • 特殊な血管構造:水を飲む際に脳に血液が逆流しないようにする工夫。
  • 7個の頚椎(首の骨):人間と同じ骨の数ですが、1つ1つが非常に長い。

キリンの長い首が示す進化の神秘

キリンの首が長くなった背景には、「高い木の葉を食べるため」「オス同士の戦い」「突然変異」など複数の説が存在し、今も研究が続けられています。一見、便利で美しく見えるキリンの長い首も、実はバランスの悪化や心臓への負担、捕食リスクの増加といったデメリットを抱えています。

それでもキリンは、強力な心臓や特殊な血管構造など長い首に適応した体の変化を遂げながら、サバンナという厳しい環境で生き抜いてきました。

キリンの首の長さは、自然の進化がもたらした壮大な「試行錯誤」の証とも言えるでしょう。メリットとデメリットが同時に存在するその姿から、私たちは「適応」という進化の本質に触れることができます。

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